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概要

news_no.94

(16)第94号 一般社団法人 全国病児保育協議会ニュース 2018年(平成30年)10月1日調査研究・インシデント管理委員会セミナー 平成29年4月から乳幼児の教育・保育施設での重大事故、すなわち死亡事故と1か月以上の治療を要する事故については、全例を所轄官庁に届けることが義務付けられました。届けられた記録は、個人情報や施設が特定できない記載で、厚生労働省のホームページに公開されています。それによると平成29年度は8件の死亡事故があり、そのうちの1件は病児保育室でした。重大事故を分析すると、1か月以上の治療を要する事故のほとんどは骨折で、3歳以上の屋外での発生であったのに対し、死亡事故の80%は2歳未満、約50%は乳児期の室内での睡眠中で、SIDSや循環・呼吸不全、病死が死因とされています。 これまでの協議会実績調査によると、年間利用児延べ人数の総計は約30万人ですが、回収率を考慮すると協議会加盟施設の預かり児総数は50万人程度と推定されます。さらに加盟施設ではない施設も含めると、病児保育事業施設全体の年間利用児数は60 ~ 70万と推定されます。この春に改定された保育所保育指針では2歳未満児の保育の対応を重点にしていることから、早期から保育所に通所する子どもは増加すると思われます。それに伴って病児保育の利用者数の増大、さらに低年齢化が加速されると思われます。幸いこれまで協議会加盟施設では今回の死亡事故も含めて、重大な事故の発生はありません。しかし病児保育の社会的ニーズの増大や施設の運営状況、職員の就業状況を考えると対岸の火事ではありません。 そのようなことを踏まえて今回の研修会は、病児保育に特化したインシデント分析の理解と事故の対応の習得をしてもらえるような企画にしました。まず前者については、すでに運用されてから6年経過するインシデント管理システム(mims)のサーバに蓄えられたインシデントデータを米倉順孝委員が一つ一つ分析し、分類化しました。本委員会は次年度から事故に関する委員会が分離し、独立しますが、米倉委員はその委員会において委員長として、これらのデータを応用して病児保育室に特化したKYT(危険予知トレーニング)の作成など、今後の協議会施設の安全管理に繋がる活動をしていただけると期待しています。事故対応についてはPALS(小児二次救命処置)インストラクターでもある香川県立中央病院小児科の岡本吉生先生を招聘し、小児、特に乳児・若年幼児の呼吸・循環不全の予知と対応の講義と実習をしていただきました。予想外にCPR(心肺蘇生)や異物誤飲の実習に積極的な聴講者が多く、会場は熱気にあふれていました。病児保育の安全管理の推進に役立つ大変よい講習会であったと思います。報告者/調査研究・インシデント管理委員会 委員長:荒井 宏治を明確に述べられ、本年3月に大幅改訂された厚労省のガイドラインにそって、小児科外来の実情や病児保育室との対比をおこないながら解説をしていただいた。講演中ご披露いただいた「手洗いのうた」(CMソング)は、ちょっとした安らぎの時間だった。 予防接種や記録の重要性、他機関との連携などガイドラインを通じて総合的な感染症対策の必要性を訴えられた。川崎先生の研究費で印刷配布されたガイドラインが参加者へのハンドアウトとして提供された。参加された方は、ちょっとお得感があったのではないだろうか。2)「勤務医の日常診療から病児保育における感染予防を考える」    岡田隆文先生(四国こどもとおとなの            医療センター小児科 香川) ユニークな名前の病院は、成人を対象とした施設と香川小児病院との合併により設立された医療センターである。岡田先生はインフェクションコントロールドクターとして、成人を含めた院内感染の管理にかかわっておられる。このセミナーでは、大会の開催地にちなんだ感染症のエキスパートをお呼びして講演をおこなっていただいているが、その意味では、病児保育の視点からすこしはなれて、より大局的な感染症の講義を拝聴させていただいた。今回も、「かぜ症候群」というありふれた病態を、平易な表現でわかりやすく解説いただいた。とくに、抗菌剤の適正使用に関しては、保育士看護師の会員にはよく理解できたのではないかと思われた。先生の最後のスライド「小児医療は病棟から外来へ、さらには生活の場へ」は、子どもをトータルでとらえ、多職種で守り続けるという小児医学の基本を伝えられており、印象的であった。